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東京地方裁判所 昭和51年(ワ)8429号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

被告は昭和五〇年一〇月一七日と同年一二月二三日の二度にわたり、訴外会社より根抵当権の設定を受けたところ、訴外会社は昭和五一年六月一四日破産宣告を受けるに至つたもの。

【判旨】

四被告は、被告以外の破産債権者を害することを知らずに破産会社と本件各契約を締結した旨主張するので、この点につき判断する。

<証拠>を総合すると、

1 被告は、昭和四六年ころ破産会社と取引を開始し、一亘取引を中断した後、昭和四九年夏ころから、与信限度三〇〇〇万円で再度取引を始め、昭和五〇年九月当時には、与信限度を九〇〇〇万円に拡大して取引を継続していたこと、

2 被告は、かねてからナイロン繊維製品の取扱高の拡大を図つていたので、昭和五〇年九月ころ、破産会社に対し、破産会社の取扱商品のうち、被告がそれまで取扱つたことのない東レ製品の仲介を申入れたが、当時破産会社は、その大口取引先で、多額の売掛債権等を有していた堀口、置賜が倒産したことから、その先行きに不安をもつ向きがあり、八木商店、岸商事等それまで破産会社にナイロン繊維製品を納入してきた取引商社がその与信枠及び取引額を縮少するようになつていたので、その代替納入先を得る目的もあつて、直ちにその申出に応じ、その与信限度を二億円に拡大することを求めたこと、

3 そこで被告は、破産会社から決算書類等の交付をうけてその信用状態を調査し、堀口、置賜の倒産により蒙る影響等についても説明を求めたが、破産会社では、その営業状態は順調で、堀口、置賜に対する債権については、十分の担保や反対債権があるので、その影響は殆どない旨説明したこと、

4 そこで被告は、破産会社は、被告から商品の供給をうけることにより、十分その営業を継続していくことができるとの判断に立ち、与信限度拡大の条件として、担保の提供を要求したので、破産会社もこれを了承して、本件各契約を締結するに至つたこと、

5 その後、破産会社の信用不安を告げる風評がしばしば流されたが、被告は、これをデマであるとする破産会社の説明を信じて、その取引を拡大し、被告が倒産した昭和五一年二月五日現在では、その債権額は、合計金一億七三七万三〇〇〇円に上つていたこと、

6 しかしながら、前記認定のように、堀口、置賜の倒産により破産会社の蒙つた損害は極めて大きく、また、兼六染布に対する債権もその回収は極めて困難であつたため、破産会社の資金繰りは次第に窮屈になり、昭和五〇年末ころには、そのままで推移するときは、昭和五一年二月五日に金五〇〇〇万円の資金不足を起すことをはじめとして、以後継続的な資金不足に陥ることは避けられない状勢になつたこと、

7 そこで、破産会社は被告に対し、資金援取の申入れをし、被告の営業部では、昭和五一年一月一八日ころ、破産会社の資金援助を内定し、その旨を破産会社にも告げていたところ、同月二三日破産会社及び資金繰りの柱であつた竹多が突如病に倒れて入病し、破産会社の先行きに大きな不安を生じたので、被告は、同月三〇日及び三一日の両日破産会社に赴き、その経理内容の調査をしたこと、

8 その結果、被告は、破産会社の経理内容がそれまで知らされていたのとはかけ離れて悪いことを知り、急拠破産会社から手を引く方針を固め、本件各契約の目的となつた一部の土地につき代物弁済契約を締結するなどして、専ら自己の債権を確保する策に出たため、破産会社は、遂に倒産するに至つたこと

が認められ、右認定に反する証拠はない。

以上にす(ママ)れば、被告は本件各契約が他の債権者を害することを知らないで、これを締結したものというべきであろ。

(野崎幸雄 宮森輝雄 法常格)

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